【猫論】ひめたん、再入院 ~Book Of Days 7~8

 DAY 7

 この大学病院は土曜、日曜、祝日は面会時間が午前中11~12時だった。僕は毎朝だいたい7~8時に起きて前日までのメールをチェックし、机に向かう。依頼された仕事に追われていることがほとんどだが、情報というナマモノ相手だから実に予定が立てにくい。証言をメールでもらって完成させる原稿は、その証言だけがまだ未着のまま、おおよその原稿を書いて「待つ」こともあるし、仲間の記者に頼んだ確認事項を「待つ」ことも多い。僕は他のライターの手直しもやっていて、完成版を執筆者に確認してもらうのも「待ち」だ。この「待ち」が長いほど、その日の終業時間が遅くなる。ただ、11時に病院に行くとなると、10時までには仕事を切り上げるから、さらに仕事のペースダウンは避けられない。できなかった分は翌日に持ち越すが、何しろ頭を使う仕事なので脳の調子によって差が出る。スッキリしないときはブログがウォーミングアップ代わりになるが、いずれにせよ、遅れが出ては、そのしわ寄せで休みなどなくなる。気がつくと次週の週刊誌用にネタ企画の催促があって、複数の月刊誌も抱えている。ジャーナリストとして20年以上、こうして仕事が途切れないのは本当に幸運だが、ペース調整が難しい中での毎日の見舞いはなかなかハードだ。

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 それでも人の少ない休日の病院へ着くと、頭はひめたんのことでいっぱい。顔を見るまで彼女がどうなのか分からない。ひょっとしたら体調が悪くなっているんじゃないか、そんなネガティブな不安がどうしても襲ってくる。玄関口は閉じていて、裏口にまわるとドアがあり、そこから中に入るとちょうどICUの前に出た。いつもより、さらに静かで明かりの少ない院内。受付の女性に猫の名前を言うと、彼女は確認のため繰り返すが、「HIMETAN」は、「ヒミタン」に聞こえる。マレーシアでの英語読みだと「MOGMOG」も「モンモン」と呼ばれる。本来は「MOGUMOGU」だが、英語のスペルも自分でそう決めたものだ。なんてことを考えているうちに時間がきて中へ。

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 ひめたんはおおむね良好。そう分かるのは、こっちが姿を見せると、首を上げてキョロキョロと反応するからだ。以前はもっとぐったりしていた。置いてあるエサが減っていないので、新たに代えてあげたら少し食べてくれた。首や頬を撫でると、かすかに喉を鳴らす。痛かったり苦しかったりはなさそうだ。撫でながら話しかける。「もう少し、ここにいるんだよ。イイ子だね~ひめたんは」 言葉は分からなくても気持ちが伝わることを願う。


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 この日は周囲ケージを見たら猫が増えていた。おとなしく入っていて、一見してどこが悪いのか分からないが、点滴を打たれたりはしていた。治療中の猫たちを見るのは辛いが、ひめたん以外にいないよりは、みんなでがんばろうという気になる。

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 遅れて黒猫のLILOちゃんの家族たちも到着。この日はLILOちゃんをケージから出して床に寝させて家族みんなで撫でていた。かなり怯えて警戒心の強いLILOちゃんが家族の前では普通に人に懐いている猫になる。犬サイドの方には大きな黒い犬が横たわっていて、寝ながら便をし、かなり具合が悪そうだった。こちらは面会時間に飼い主が現れず、猫よりも賢い犬だけに、なお寂しそうでもあった。この日は、ひめたんと同じぐらい他の犬猫も気になっていた。ひめたんが回復傾向にあったのも理由だが、ここに毎日通っていると、みんな仲間みたいに思えてくるのだ。同じ闘病という中での戦友みたいな感じだ。この夜、病院からの電話では、ひめたんは夜、少し食事をしたと聞いた。




 DAY 8

 日曜日の病院は清掃業者が右に左にと忙しく働いていた。喚起のファンまでも取り外しての大作業で、まるで年末の大掃除のようでもあった。毎週かどうかは分からないが、マメにここまでやっているからこそ、この病院は清潔で、動物の獣臭もないのか。この日は待合室で、面会時間になっても中に通されなかった。15分過ぎぐらい、中に入ると、昨日寝ていた大きな黒い犬が白い布に丁寧にくるまれているところだった。5名ぐらいの医師やスタッフが集まっていて、最後の治療にあたり、ちょうどいま亡くなったという風だった。挨拶の言葉すら出ない。前日に見たばかりの犬だったが、ここで息を引き取るまでの人生があったはずだ。赤ん坊から子犬になって、はしゃいで走りまわった日々があっただろう。飼い主のくれる好物に尻尾を振っていた日々があっただろう。いまここで生涯を終えたというのは、その犬にとっては最後の重要な出来事で、その場に居合わせただけでも無視できることじゃなかった。

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 悲しみを感じる中で、静かにひめたんと対面した。横になって寝ていた彼女だが、僕を見ると体を起こした。ビニール越しに開けたてのドライフードを見せると、じーっと見ていて、ハウスのチャックを上げ、口元にもっていくと食べだした。食欲があるのは嬉しい。ひめたんの入っているハウスはガムテープでかなり補修されながら使われている。内側から猫がひっかいて脱出しようとしたからだと思う。みんながひめたんのようにおとなしくはないのだろう。

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 彼女の腹の呼吸リズムは今までで一番、落ち着いているように見えた。かなり回復してきているのではないか。ここ数日、この先、どうなるのだろうと思ってきた。呼吸器が治らなければ、ずっと酸素ハウス入りなのか。だから、通販で自宅用の酸素ハウスを探して、入手できることを確認してみたりもしていた。いろいろ覚悟して、ひめたんを少しでもサポートできるようにしておきたかった。どうやっても後悔はあるだろうけど、思いつくことはやっておきたい。ただ、この状況だと退院の希望を持ってもいいかもしれない。その回答を聞くのは少し怖いけど、週明け、医師に聞いてみよう。この日もLILOちゃんの家族は来ていた。詳しい病状は知らないけれど、1日も早く退院できるよう回復してほしいと願う。

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 病院からの帰り、チャイニーズ・ニュー・イヤーで賑わう近くのショッピングモールに立ち寄り、ペットショップで猫用のステップを買った。団らんの時、ソファーに集まる猫が昇りやすいようにしたかった。もちろん若い猫はひとっ飛びだが、ひめたんは衰弱しているし、もぐもぐは高いジャンプをしなくなっている。このステップは店で過去に2度、買うかどうか悩んでいたものだったが、猫のことになると財布が緩くなる。

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 このステップは猫が中に入って遊べるようになっていた。置くと早速、もぐもぐが中へ入り、ナッツが「兄貴、なにしてるのー」と付いていった。彼らは自分たちのために持ってきてくれたものだとすぐに認識しているようで可愛い。親心としてそれを見るのが幸せだ。みんなでひめたんを待とう。夜の連絡は、とても早口な英語の女性がざっと説明を口走っていて、同じ報告でも人によって全然違うものだと思った。(片岡亮)

猫論 https://genron1.blog.fc2.com/?cat=2


コメント

コメント(2)  最新コメントへ  
[ 636715 ]  No title
戦友が亡くなるのは寂しいですが、そう思ってくれる方が
近くにいてくれて、幸せを感じたと思いますよ。

ひめたん!あなた幸せだよ。

panerai  #-

2020/02/03 編集返信
[ 636852 ]  No title
ひめたんが早く退院できますように☺️
そう願うばかりです。

LILOちゃんも家族にすごく
愛されている猫ちゃんなんですね。

みんな回復してほしいです。
切にそう思います🐈

お仕事と看病と、大変ですが、
お体を大切になさってくださいね😊

みー(=^ェ^=)  #-

2020/02/05 編集返信
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