【猫論】ミッくん、辛い告知 ~免疫不全ウィルス(FIV)

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 半身不随だったミッくんが、短期間で自力で立てるようになり、そして何とか歩けるようになったのは奇跡というほかなかった。片足は動いていないし、風が吹いて倒れてしまったほどヨロヨロだが、彼は「もう大丈夫」と言わんばかりに、いつもどおりの行動をしたがった。食べる努力も本当によくしてくれた。15歳を過ぎたあたりからのミッくんは特に気分屋で、そのとき、そのときで好みの食べ物が変わる。昨日まで喜んで食べていた缶詰に見向きもしなくなったりした。初めて与えるフードや、久々に買ってきたフードに興味を示すことが多かったから、よく「ミッくん、新味だぞ」と反応を見る。でも、今回の高栄養食は同じものをちゃんと食べてくれた。シリンジで半ば強引に口に入れるから最初は嫌がって口から落としていたけれど、次第に応じて食べてくれるようになった。だから逆に別のエサを挟んであげながら、高栄養食の規定量を食べてもらった。これ以上の体重減少は危険だったから、そこはこっちも努力だった。日本との行き来でマレーシアから持って帰りたいものはたくさんある。僕は業者に頼むような引っ越しはしていない。日本の倉庫に保管した所有物は、行き来する中で少しづつ運べば安上がりだと思った。でも、結局はスーツケースは航空会社の制限いっぱいに猫用品で埋まった。

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 ※実際に帰国時に開けたときのスーツケースの中身。猫のためのものが95%。猫に聴かせるためのCD(David Teie/Music For Cats)も。自分のために持ってきたのはおろし器、気に入っていた鍋つかみ、お客が来たときに出す日本のお菓子、電気カミソリの充電器、カクテルシェイカーぐらい。
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 ※フードは一般の総合栄養食やおやつの他、マレーシアで手に入らない健康・介護系も。食べないのもあるから種類を豊富に。
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 ※いままで使ってこなかった栄養剤の類。おそらく口にしないと思われるが、試せるものは全部試す。

 ちなみに先日の行き来、フィリピンに立ち寄るためマニラ経由のフィリピン航空を使ったら、荷物の扱いがひどくてスーツケースの角が大きく割れ、車輪ごと吹っ飛ぶ大破。長く使おうと6年ぐらい前に5万円ほどで買った超軽量の丈夫な特注品で、アフリカとかマルタとかメキシコとか、行く先々で手に入れたステッカーを貼っていった愛着のあるものだった。フィリピン航空は弁償すると言って書類を提出させたが、あとで伝えてきた補償額はわずか40ドル(約4300円)、謝罪もせず「これだけ良いオファーをできることを嬉しく思う」などと書いてきた。過去、他の航空会社でも破損の弁償経験はあるが、ここまでひどくなかった。命を預ける航空会社選びは大事だ。



 東京-クアラルンプールは大きな取材やテレビ出演など緊急で帰るときは6万円の航空券(もちろん自腹)を買わなきゃいけないこともあるけれど、マレーシア航空が安いときで34000~38000円ぐらい。全日空も3万円台で買えることがあるから通常はそこを利用して早めに買う。LCCのエアアジアだと2万円台で行けるが、僕は3時間以内ぐらいの渡航に限定している。東京-クアラルンプールの6~7時間だと193センチ・92キロ(現在)の僕にとってLCCはきつい。実を言うと、僕はプロレス時代の後遺症もあって左足の神経が麻痺、一部の感覚がない。正座して足がしびれたのに近い感じで、蚊に刺されてもあまり痒くないのである。そのため思いきって走ることが怖いし、ときどき動きに数センチのズレが生じて足をぶつけることもある。医師にもエコノミー症候群に気をつけてと言われていて、狭いところに長く座ると左足の麻痺が一時的に広がるからLCCは近距離のみの利用にしている。ミッくんの脚が動かなくなったとき、「飼い主ともども脚が麻痺なんて、ほんと僕たち仲良しだね」と彼に言った。

 でも、ミッくんがまさか再び歩けるようになったのは、医師もかなり驚いていた。僕もこんなに早く歩く姿を見られるとは思っていなかった。で、こういうとき決まって同じ話をしてしまう。「彼を拾ったとき、死ぬ寸前だったのに4日間の入院で息を吹き返したんです。生命力の強い子なんです」と。ただ、それで話が終わらないのが医療。体重減少の原因を医学的に判明させないとならず、血液検査をした。貧血で痩せたミッくんは最近、血液を採取するのが大変だった。この日は注射針を入れるだけで激痛が走ったようで、声にならない悲鳴を上げ、ついに「シャー」と怒った。穏やかなミッくんがこうして怒ったのは、片手の指折りで数えられるんじゃないかというほど珍しいことだ。その姿を見ているだけで僕は辛かった。その場で、病院から連れ出したいほどだった。

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 ※「もう帰れるからね」となだめる

 本当にショックだったのはその診断結果の方で、猫エイズとも呼ばれる死の病、「免疫不全ウィルス感染(FIV)」の陽性だった。いつ感染したかは分からないが、これまで無数に血液検査をしてきて、それが判明したことはなく、我が目を疑った。前にこの病院で検査をした時も、その兆候は見られないということだったが、今回は目の前が真っ暗になる結果だった。FIVは基本、感染している猫に噛まれて感染する以外にない。同じ器のエサを食べたとかでは感染しない。発症しない潜伏期は何も症状が出ず、発症しないままということもあるが、発症すると免疫力が低下するから、様々な病気を引き起こす。下痢、発熱、口内炎、貧血、腫瘍、体重減少などで、最悪、発症から数カ月で死ぬ危険性があるという。治療法はないから絶望するしかない死の病だ。うち口内炎や貧血、激ヤセが最近、ミッくんを悩ませていた症状で、たしかに当てはまった。ただ、医師曰く「免疫が落ちるけど、室内で飼って他の病気にかからなければ、そこから何年も生きる猫もいるから」とのことだった。「噛みついたりしない限り、ほか4匹の猫にも感染しません」



 以前、ミッくんは下痢が続いたことがあったが、最近は便も正常だった。食事するたびに痛がっていた口内炎も塗り薬と高栄養食を取ってからは治ったのだ。なにより寝たきりからの復活があった。「ミッくんは生命力が強いんだ」と僕は自分にも言い聞かせた。ただ、重い病気に感染させていながら気付いてあげられなかった飼い主としての自己嫌悪からは逃れられなかった。これは僕のせいだ。0歳の状態で助けたとき、すぐに飼う決心がつかず、数カ月は放し飼い状態だったし、3~4歳の頃は動きが素早くて家から脱走することも許してしまった。その後、庭にやってきた野良猫がかわいそうで追い払わず、寝ていたミッくんを1度だけ襲ったことがあった。この5年ぐらいは思い当たるところはなく、マレーシアでは他の猫とも接触させてない。いつ感染したかは分からないが、どこかに僕の落ち度があった。大事な家族を守れていないのだから、飼い主として失格。この愚かな過ちをしてしまう愚かな人間により、ミッくんが取り返しのつかない不幸になっていた。いますぐ猫飼いを引退したい気持ちになった。

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 辛い宣告のあと、唯一、救いだったのはミッくんの回復した姿で、診察室にいたとき、一緒に診察を受けたひめたんのキャリーケースの中に逃げ込もうとした。彼は病院が大嫌いだ。ロビーで会計を待っているときも、床を歩きたがった。これは日本でもそうだったのだが、彼は賢いから、初めて行く病院であっても、出口がどこにあるかをしっかり見ている。そして、床に離すと出口で向かうのだ。マレーシアの大病院は犬と猫がエリアで完全に分かれているし、この日は待合室にほとんど人がいなかったから、すぐ横をついて行きながら歩かせてみた。やはり出口の方へ向かったから、途中で僕が抱き上げ、外に出てみた。建物の横に草の生えた庭があって、そこを少し歩かせると、なんと得意だったマーキング。おしっこを少し飛ばして、また歩いた。若い頃から変わらない動作を僕に見せてくれたのだ。「僕はどこも悪くなんかない。ほらね」と言ってくれているようだった。

 もちろん、病院周辺を歩くのは目に見えない不安もあるからアルコール消毒の布で足などを拭いたが、ここ最近は草の上に連れて行っても、ほとんど歩かずに座っているだけだったこともあったから、これは嬉しかった。日本では深夜、誰もいない公園をリードも繋がずに一緒に散歩できた日々を思い出した。家から一緒に出て、僕が彼の後をついて歩く。時間制限なく散歩してしまうから、ときどき向かう方向を修正することはあるが、基本は自分でぐるり一周して自分で家に戻ってくれるのだ。その姿を見た近隣の人が、「まるで賢い犬のようでビックリ」と驚いていた。病院横の散歩は数分で終わらせたが、抱きかかえながら、「どんなに重い感染でも、もとのミッくんに近づけるのが僕の仕事。飼い主に引退なんてない」と思った。なお栄養に気をつけ、体重を増やし、別の病気を発症しないよう気配る。これで半年でも1年でも長く生きられるようにしたい。辛い告知に落ち込む暇があるなら、彼をもっと気にかけよう。

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 家に戻って玄関に離すと、ミッくんは自分で窓際の寝床スペースに横たわった。日本から持ってきたペット用クールベッド。最近はずっとこれが彼のお気に入りだ。日差しが強くないときはベランダでそよ風の中、眠る。歩けるようになったことで、その往復も自分でしてくれた。おかげで深夜2時間おきに起きて寝相を変える大変な作業からも解放された。すべては、ミッくんの生きる力によるものだ。猫はみんな可愛いけれど、飼い猫としてこんなに誇れる子は他にいない。(片岡亮)

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  • コメント 8

コメント

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涙が出る…

ミッくんが可哀想とか そんな感情じゃない

愛の深さに自然と涙が流れ落ちる

貴方は立派な 猫飼い です。

私にできる事などありませんが
ただただミッくんの回復、健康を
祈り、願っています。
それだけは できる!
ミッくんの ファンとしてね!(^^)
頑張れ!ミッくん!
応援してるぜ!!!

  • [612919]  2019.07.14
  •  フクロウ #-

No title

片岡さんは素晴らしい飼い主ですよ。
それはミッくんだって判っているはずです。

片岡さんと片岡さんの猫ちゃんたちに沢山の幸運を。
心からお祈り申し上げます。

  • [613353]  2019.07.14
  •  yuki #-

動物には

動物にはわかると思います。
片岡さんが素晴らしい飼い主さんだからこそ、生きていようとするんだと思います❗
どんな生き物も死にゆく前の世話が一番大変で悲しいと思います…
僕も少しでも片岡さんを見習って飼っている猫を最期まで愛情を持ち、精一杯世話できるようになります。
これからもご自愛ください。ミッくんが1日でも長く、元気に過ごせることをお祈りします。

  • [613367]  2019.07.14
  •  リン #qNXjQhIg

厳しい現実ですね。
トランクは、ペリカン製が頑丈と聞きますが、但し重いのが難点なのだとか。

  • [613529]  2019.07.15
  •  非A #GxAO5jdM

No title

飼い主が片岡さんで幸せだと思います、本当に。

  • [613574]  2019.07.15
  •  panerai #-

ミッくんは本当に賢くて、生命力の強い猫ちゃん😸
片岡さんとの強い絆、信頼関係が、ミッくんの安心感になり、回復につながっていると思います。
歩けるようになって、本当によかった‼(^ー^)
マーキングまで(笑)(*´∇`)

病気の症状がなるべく出ないように願うばかりです。体力をつけて、毎日、少しでも楽に過ごせますように🐱

  • [613587]  2019.07.16
  •  みー(=^ェ^=) #ZzYKuueA

ミッくん主演映画の続編が見たいです(^.^)

  • [614370]  2019.07.20
  •  トト #38KbIOTo

ミッくんは
片岡さんを選んで、拾われたんですよね😊
ふたりの絆は永遠です。
ほんと、涙出ちゃいます。

ミッくん、がんばれ✊‼
大きな愛と体で包んでくれる
片岡パパがついてるよ。

そして、片岡パパにも
君が必要なんだよ。😊

  • [615037]  2019.07.23
  •  いちご姫 #-

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