【猫論】ミッくん、半身不随 ~20歳の誕生日に始まった挑戦

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 とてもショックで悲しいことだ。ミッくんの右手、右足の感覚がない半身不随の状態になってしまった。ある日のこと、外でランチを食べて帰ったら、ミッくんがリビングに倒れていて、そのままおしっこを垂れ流していた。地力じゃ立てない状態で、すぐに近くの小さな動物病院に連れて行ったところ、医師に「もう高齢だから仕方ない。サプリメントを飲ませるぐらいしか方法はない」と、グルコサミンを処方された。



 甲状腺の病気でこの数年は体重が減少傾向だったミッくん。全盛期6キロもあったのに、長く3キロ弱が続いていた。赤ん坊用の皿の付いた体重計を買って定期的に計量していたのだが、この1カ月ぐらいでさらに痩せ2.3キロに。歯肉炎もあって、食事をしても少し痛がって食べるのをやめたり、固形のものが口から落ちてしまったりしていたから、少しでも食べやすいよう工夫をしてきた。高齢者用の柔らかいフードはマレーシアでは見かけないので、日本からせっせと運んでいた。

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 それまで使っていたミニテーブルでは「それでも低そう」だったから、段ボール箱に木目の張り紙をしたものを急造。
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 後に、さらに高い食器台を購入。

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 最終的に専用の台にした。

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 お散歩のときは必ず水が不可欠。



 そして、IKEAで木箱を3つ買ってきて、足を付けて階段を2つ作成した。

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 ちゃんと使ってくれた。この後、表面に滑り止めになる絨毯を貼った。

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 気になったのは、寝るときにヨダレが出ること多くなったこと。ミッくんはツルツルのノートの上で寝ることが好きだったから、画用紙を置いて汚れる度にページを抜くようにしていた。少し落ち着くかなと思い、植物も添えた。

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 上記は4月下旬の写真だが、この時点では見た目にいつものミッくんだった。この夏、ついにミッくんは20歳を迎え、ケーキで祝った。少し舐めただけだったが、もぐもぐも味見。

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 手のひらに乗るサイズのミッくんを拾ったのは20年前の夏の日、栄養失調でグッタリしていた。医師に「助からない」と言われても入院させたところ、奇跡の回復を遂げた「生命力の強い子」だ。白黒のハチワレ模様が中央からちょっとズレてるのと、鼻が低いタヌキ顔がチャームポイント。滅多に怒ることがなく、野良猫が庭でケンカしていたのを見て、悲しい声で泣きながら割って入った“仲裁”には、性格の穏やかさが見てとれた。撫でられるのが好きで、僕の顔を見ただけで喉を鳴らすこともある。鳴き声を使い分けて僕に「ごはん」、「なでて」、「さんぽ」を伝えてくるから、一番通じ合える気がする猫だ。僕の猫ライフが本格化した長男は、片岡家を晴れの日も雨の日も和ませてくれた功労者。こんなに長く一緒にいてくれたのは本当に感謝しかない。



 ただし、この20歳の祝いムードは、この緊急事態でイヤな節目になった。高栄養食に切り替えていたが、口が痛いのか、食欲もあまりない。食欲がなくなるのは動物にとって最大のピンチ。さらに下半身を触るとビクッと口を開けて痛がった。だいぶ前に声帯を痛めているから声が出ないのだが、骨でも折ったのかとも思って、腫れ物に触るよう扱った。ただ、医師の「老化」だという見解は、僕は信じなかった。明らかに見た目がやつれていておかしい。目は半開き、顔の周りもガサガサ。いくら高齢猫のミッくんでも、前日はコンドミニアム内の公園を散歩できていたのに、この半身麻痺の原因は別にありそうだと思った。ずっと覚悟してきた最後の日は遠くないと思ってはいたが、今回の状況はそれじゃない。小さな病院では診断できないのだと思い、大学病院へ連れていくことにした。

 病院では受付が最初うまくいかなかった。事前に以前診てもらった信頼できる女性医師のアポを取ろうとしたが、予定がいっぱいですぐには無理だと言われ、別の医師に診てもらうことにした。ただ、なぜか長々と待たされた。30分や1時間は仕方ないと思ったが、あまりに長いから途中でクレームを入れると、「カルテの名前が該当していない」と受付。僕は最初の診察で「MICK’N」と書いていて、これは輸入許可証の正式スペルでもあったのだが、病院ではそれがいつの間にか「MIKKUN」になっていて、カルテが一致せす、このトラブルで結局3時間も待たされてしまった。日本ならこっちがクレーム入れた時点で対処するだろうが、マレーシアでは呑気なことが起こる。カルテを書き直している受付の女性は「ミッくんの年齢は20カ月ですか? え、20歳? 一体、何を食べさせたら、そんな長生きするんですか」と驚いていた。医師は初対面になる中華系の若い男性医師。「これは半身麻痺だ」とハッキリ言われた。「検査をすれば原因はわかるだろうけど、全身麻酔をしたら高齢だから危ないし、どこまで調べるかです」と言い渡されたが、僕はそれでは納得できなかったので、やっぱり女性医師のアポを取ってもらうことにした。

 次の診察日までに、介護を覚悟した。手足の動かない猫、食事とトイレのサポートだけではない。床ズレや筋肉の劣化を防ぐため、2時間おきに体勢を変えてあげたい。片時も目が離せないから、仕事中もそばに置き、真夜中、何度も起きる必要があった。人間とは比べられないかもしれないが、いざ自分が介護というものに向き合うと、ハードな作業に立ち向かう決意が必要なのが分かった。たしかに生活が一変する。3時間以上の外出ができなくなった。

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 後日の再診察では、女性医師が、神経科の専門医も呼んでくれた。まず「骨折はない」ということだった。そして「猫免疫不全ウイルス、いわゆる猫エイズや猫白血病」の可能性は、過去の血液検査のデータでその兆候がないということだった。このあたりになると専門用語の病名略称や、15文字以上の単語など英語では理解しにくく、ネットで調べながら応答した。痛みはおそらく「変形性膝関節症」によるものではないか、という。半身不随とは別のようだ。血液検査の結果、衰弱は「貧血による可能性が高い」という。
「なぜ貧血になったかはすぐに分からないですが、鉄分の薬を取ってみましょう。リハビリして手足が回復することもあるから、手足を4分づつ動かすように」
 院内のファーマシーで薬を処方してもらったが、貧血用のFERROCITEなるものは人間の薬局に行かなければならなかった。マレーシアでは日本よりも薬が手に入りやすく、処方箋なしで買えるものも多いが、今回のは処方箋が必要で、それも日本からの取り寄せだといわれた。

 いろいろ思い巡った。マレーシアに来て、ちょうど1年。これなら「日本にそのままいた方が良かったのかどうか」と自問自答した。でも、簡単には帰れない。日本は狂犬病予防が厳しく、動物と戻るには半年ほどの検査機関が必要だから、帰国するにも最短で半年先なのである。ただ、僕はネガティブな気持ちで生きるのが人生で最大の敵だとも思っている。生きていればたくさんの辛いことがあるが、いかにそれをストレスい感じずに進むか、それが最優先だ。僕が20代なら挫けたことも、いまは違う。肉体は若いころより劣っても、心はずっとタフになっている。ミッくんの介護は大変だけど、「これも経験できる喜びだ」と思えばいい。すごい経験をさせてもらっているんじゃないか。そして、たとえ1%でも可能性があるなら、ミッくんにまた歩かせてやりたい。しんどいけど、ランナーとしてスタート地点に立つ気分に変えた。



 ヨダレが漏れると肌が荒れるから、考えた末に「珪藻土マット」を見つけてきて置いたら、これがハマった(上記写真)。水分を吸ってくれるから、アゴが汚れなくなった。そして、前に病院でもらったオロヒールという蜂蜜など成分の口内炎用の塗り薬を口に与えると、ヨダレは日々、減っていった。すると、食欲がいくらか戻り、高栄養食をできるだけ食べさせた。必要量に満たない分は、心を鬼にしてエサやり用のシリンジで口に注入。そして、ミッくんに呼びかけた。「もう20歳だけど、いま倒れるときじゃないよ」 最後は病院ではなく自宅でゆっくり眠らせてあげたいけど、それはいまじゃない。なぜか僕には分かる。一緒に頑張ろう。また歩こう。こうして僕らのチャレンジが始まったのだ。(片岡亮)
  • コメント 13

コメント

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No title

愛に溢れてる。

  • [611237]  2019.07.02
  •  ワン太郎 #-

片岡さんの行動力とポジティブ思考には敬服します。どんな状況でも今何が出来るかを考えて日々大事に生きたいですね。ミッくん頑張れ!

  • [611240]  2019.07.02
  •  トト #38KbIOTo

No title

大切な時間になりますね。きっと。

  • [611245]  2019.07.02
  •   ジャム    #-

ミッくん🐱

からだが思うように動かなくて、辛いでしょうね💧
でも、大好きな片岡さんがいつもそばにいてくれるから、安心しているはず☺️

なんとか、栄養をちゃんと吸収して、まずは体力を取り戻してほしい。
前の日まで散歩できていたということは、単なる老化ではないから、よくなる可能性は十分あると思います‼️
またお散歩できるように、回復を願っています😊‼️

  • [611249]  2019.07.02
  •  みー(=^ェ^=) #ZzYKuueA

No title

伝わってきます。
私たちに伝わるのだからミッくんにも伝わりますよ。
昨日から、うちの子供が高熱と涙ぐむほどの咳のため付きっきりで看病していてなんかね。

  • [611251]  2019.07.02
  •  panerai #-

No title

いつも拝見しております。
頑張ってとは言え無いけれど、
片岡さんとミックン(そして兄弟猫ちゃんに)
沢山の幸運がありますように。

  • [611316]  2019.07.03
  •  yuki #-

宝物

20歳ですか、長生きしてくれてますね、ミッくん。

ウチで前に飼っていた猫も21年と長生きしてくれました。

私の経験談を紹介するのは控えますが、本当に大切で貴重な時間になってくると思います。

ミッくんとたくさんお話ししてあげてください、お話ししてください。

ミッくんの回復、幸せを祈っています。

  • [611323]  2019.07.03
  •  CHAOS E.K. #JCeKwuWs

No title

先日片岡さんがちらっとそんなことをおっしゃってたので妻と一緒に心配しておりました。

みっくんも20歳。だけども本当にどれだけ長生きしても納得できるお別れは無いと思います。
でもみっくんは赤ちゃんの時に片岡さんに保護されてもの凄く幸せな時間を過ごしたと思いますし、今、片岡さんへの恩返しのためにもみっくんは今一生懸命頑張ってると思います。

みっくんの回復お祈りします。

  • [611331]  2019.07.03
  •  どこかの親父 #zuqzPF9.

厳しい容体ですね。
言葉も無いです。

  • [611434]  2019.07.04
  •  非A #GxAO5jdM

世の中のペットを飼う人達のお手本のような方。素晴らしすぎる。猫達も幸せこの上ない。時としてペットの存在は人間以上だから。片岡さんもツラいでしょうが頑張って下さい。

  • [611466]  2019.07.04
  •  名乗れない人 #-

医療が完璧ではない環境

ある意味自然に近いとも言えます。
そばにいて見守ってあげて下さい。

  • [611469]  2019.07.04
  •  sugaアール #-

No title

 みなさん、温かいお言葉、ありがとうございます。お手本というぐらいにやってあげたいんですが、反省の多い日々です。自分では猫飼いも熟練してきたかなと思っていても、失敗と思えることがたくさんあります。マレーシアでは床が石なので、転んだときのリスクを考えたら早くラグを買うべきだったかな、とか。

 医療はマレーシアの方が高度な治療がより身近に受けられる気もしますが、近くの小さな病院は大きな病気になると、まだ未成熟なところもありますね(医師は真面目な感じですが)。それでも小さな病院での治療がヒントになったことも多々あったり、いろいろですね。費用が安いのは大きなメリットですが。今日もこれから病院です。ひめたんも連れていきます。

  • [611473]  2019.07.04
  •  ★ 片岡亮 (NEWSIDER) #-

愛情と優しさに泣けてきた…

みっくん、優しい家族をもったなぁ…
きっとまた元気に歩けるさ!!

家族一丸となって頑張っていこう!!

  • [611474]  2019.07.04
  •  フクロウ #-

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