松尾佳彦×戎岡彰、引退スパーに至るYANAGIHARAジムの話

4・16福岡・小倉北体育館「THE LAST FIGHT 九州医療スポーツ専門学校杯10」
 ▼8回戦
  日本ミニマム級11位・栄拓海(折尾) × ナーヨックレック・シットサイトーン(タイ)

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 YANAGIHARAジム主催の小倉興行、メインは栄の再起戦で、ほか4回戦が6試合。ここで同ジム所属の元日本&東洋ランカー、松尾佳彦が引退エキシビションを行なう。相手は元日本フェザー級7位・戎岡彰。

 松尾は18勝(3KO)8敗6分、32歳。04年デビューの選手だが、彼が6回戦の選手だったとき、ジムの柳原廣一会長は僕に「松尾を必ずランカーにしますよ」と約束していた。当時ジムはまだ設立したばかり。会長には地方ジムならではの事情や苦労などを取材していた中だった。しかし、当時の松尾は6勝3敗3分、6回戦では4戦目にして初白星という状況だった。正直、ランカーまでいけるかなと思ったが、陣営はこの約束の後の09年、初8回戦なのにいきなり日本スーパーフライ級8位のホープ、丸山大輔との試合を組んだ。緩いマッチメイクを極力したがらない会長の英断だった。結果は負傷ドローの不完全燃焼だったのだが、この路線が弟子を奮起させ、10年からは1分挟む5連勝をマーク。当時デビュー9連勝の日本Sバンタム級12位・小沢有毅には敗れたが、それも僅差0-2の接戦だった。ランカー相手に互角の戦いをできたことで自信をつけた松尾は、翌戦で当時27勝7敗1分のベテラン元ランカー、仁木一嘉に勝利。さらに1分挟む6連勝で東洋ランカーの韓国選手にも勝って、13年、ついに悲願の日本&東洋ランク入りを果たした。5年かけて約束を果たしたのである。

 その熱意には理由があった。柳原会長は一度、業界を離れかけたときがあり、松尾ら当時の教え子たちが「自分もついて行く」と言ってきたことが、ジム設立に至ったきっかけだ。以降、「僕には試合経験がないから」と、早朝に起きて、集めた海外試合の映像などで研究し、自分でサンドバッグやミットを打つなどして実践確認、ときにエディ・タウンゼント賞を受けている島田信行氏ら有力トレーナーに指導を仰ぐなど、遠方まで出かけていた。まさに熱血指導者。「東京、大阪、大手ジムに負けるか。環境が平等でなくても、すべての人間にチャンスはあるんだ」と会長。

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 松尾は地方ジムにとっては貴重な日本ランカーで、ジム初のタイトル挑戦も狙っていたのだが、右腕尺骨骨折をしてからは動きが落ち、後に日本王座に挑戦する真正ジムの小澤怜に2連敗でランク落ち。これは2試合とも僅差1-2の接戦だったが、再起をかけた昨年4月の試合でも佐々木勇太に1-2で惜敗して引退を決めた。松尾について会長が言う。

「松尾は長い間、真面目な練習はもちろん、私生活でも、後続に続く選手の模範として現役生活を送ってきました。私の指導やマッチメイクに文句ひとつ言わず、朝は3時に起床しロードワーク、練習は絶対に妥協をしないと、本当に頭の下がる自慢の選手でした。本当に嬉しいのは、引退後にジムの後援者でもある九州医療スポーツ専門学校、柔道整復学科へ入学すること。私はアスリートにとって、第2の人生をいかに過ごすかをいつも念頭に置いてきたんです。YANAGIHARAジムにとって長男ともいえる松尾が、健全な次のステップに進めることは、本当に嬉しいことです。松尾は元来センスに恵まれた選手、いわゆる『天才ボクサー』とはかけ離れた選手でした。でも、私が思うに本当の天才とは『自分の才能を信じ努力を継続することの出来る人間』ではないでしょうか。そういう意味では、松尾佳彦は『天才』だったと思っています。日本タイトルまで辿りつくことができなかったんで志半ばとお思いでしょうが、我々には後悔はないですね。そう言えるほど、やり尽したんです」

 選手の出世よりも、人生の行く先を喜ぶ指導者。柳原会長はいつも熱い。腰のヘルニアに長く悩まされていて、医者から「完治は無理」と言われても、「絶対に治すのは諦めない」と言ってきかないような人。「癌になっても私は治る自信があります」とまで言うのである。「会長のそのしつこさのおかげで成長できた」と松尾。こちらも胸いっぱいの言葉を残した。

「16年間ボクシングを続けてきて一番思うことは、『感謝』です。会長はじめ、周りで支え続けてきてくださった、すべての方々はもちろん、酷使しても頑張り続けてくれた自分のカラダにも、いろんな意味があります。この感謝という言葉、僕の人生ではそれまで無縁だったのに、こうしてその言葉で半生を振り返れる風に育ててくれたボクシングにもまた、最高の感謝をしています。本当にボクシングを続けてきてよかったし、タイトルマッチができなかったことは残念ではあるけれど、今まで本当に一番頑張れました。実は17才のとき、死んだ父親に最後に言われた言葉が、「佳彦、男やったらいっぺんでいいけ、てっぺん目指して頑張ってみろや!」だったんです。それが心の中に強く響いて、それから気持ちを改めて今日まで走り続けてきたんですが、てっぺんこそ取れませんでしたが、そこに向かって力の限り頑張り抜いてこれた事は、今後の人生にも大変な自信になると思います」

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 興行ポスターで公式試合より扱いが大きいのは、ジム功労者への最大の敬意といえる。3ラウンドのエキシビションの相手、戎岡彰は15年まで活躍した淳一の兄。25勝(8KO)11敗2分、05年に引退しているが、辰吉丈一郎の弟分としてバラエティ番組にも出て、気の強さを前面に出した人気選手だった。熱いアスリート同士のスパーになるだろう。本戦の方では、栄(14勝(9KO)2敗1分)が出場。こちらは13年の全日本新人王で、WBO1位の世界トップランカーにもなっていたが、昨年3月の日本ミニマム級タイトルマッチで、王者・福原辰弥に判定負け。前半は接戦だったが、後半は福原のボディや右カウンターにダメージを蓄積させ差が付いた。前回12月の試合でノーランカーの平井亮輝に負傷判定負けしており、再起戦となる。

 前述の福原は世界王者になって、九州のジムに勇気を与えている。首都圏のジムに移籍したのではなく、暫定王座ながら、世界戦興行を地元・熊本で実現させた。「地方ジムでもできるんだ」と周囲に思わせた功績は大きかった。今回の興行、4回戦では西部地区新人王戦などがあり、YANAGIHARAジムからは、スーパーライト級のシュガータイキ(1勝1敗1分)がひとり出場する。相手は1勝の宇野凌汰(フジタ)。「若い選手がもっと揃ったら次の自主興行」と柳原会長。僕はまた会長が「出世の約束」をしてくれる選手が出てくることを楽しみにしている。(片岡亮)


  • コメント 10

コメント

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No title

日本ランカー止まりでしたが引退に関するイベントを行えるボクサーはとても幸運だと思いますので最後のエキシビションは頑張って花道を飾って欲しいですね。

メインの榮はお手頃タイ人との試合ですが再起戦なのである程度は仕方ないと思いますが無事勝ったら昨年12月に負けた平井とリマッチをして欲しいですね。

  • [489438]  2017.04.06
  •  s #-

No title

こういうエキサイティングなボクシングを期待するよ!
https://www.youtube.com/watch?v=2iF_e2mYQLA



  • [489448]  2017.04.06
  •  名乗れない人 #-

No title

ええ記事やね

  • [489521]  2017.04.07
  •  名乗れない人 #-

バラエティーはTBSのガチンコでしたね。あれがヤラセだと知らなかった辰吉は素が出ていて人間味が溢れていましたが、彰も知らずにやっていたのかな?
ボクシング人気の向上には役だっていましたが。

  • [489533]  2017.04.07
  •  名乗れない人 #-

戎岡彰といえば「ホンマもんやでえ!」。

いかにもチャラついた外見だが、実は日本ランカー(当時)という
ギャップが印象的でした。

確か引退後は、蕎麦屋で修業していると聞きましたが。

  • [489608]  2017.04.08
  •  名乗れない人 #-

No title

ガチンコファイトクラブ
酷い番組だった…

  • [490093]  2017.04.09
  •  名乗れない人 #-

No title

ガチンコは酷かったですね、ヤラセで結局マトモな選手は育たずに協力した沖ジムもその悪評が祟って2004年に閉鎖しましたからボクシング予備校とは対極的な存在でもありましたね。

  • [490095]  2017.04.09
  •  s #-

ガチンコは入墨ボクサー、大嶋に坂本博之、前述の辰吉とかゲストに交えたりしてボクシング好きのプロデューサーがいるであろうなと思って視てました。四国出身の狂犬、竹中。ホモビデオに出演した梅宮、コロンビア人のRichard丸山とかキャラが立ってましたよね。ボクは三ヶ月でプロテストに挑む過程を詳細に描いていれば、2期生の小松崎とか実際に素人ではない動きを見せる経験者もいただけにおちゃらけた部分なしで竹原、畑山ジム監修でリアル版でやってほしいと思っています。

  • [490108]  2017.04.10
  •  名乗れない人 #-

No title

メインの栄の試合は5RTKO勝ちで昨年12月に負傷判定負けして以来の試合に勝利して再起を飾ったそうです。

  • [491044]  2017.04.17
  •  s #-

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

  • [491860]  2017.04.22
  •  - #

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