【旅論】シチリア 猫と火山とタオルミーナ

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 2年前の話。前回のマルタ旅の続き、頻発するテロ関連の取材だったので、航空機以外の人の移動の玄関口を巡っていたものでもあるが、仕事の部分は抜きにして書くと、マルタからはシチリア島の南、ポッツァーロという港町に到着。夜は売春婦の姿が見られる中をかなり歩いて空いているホテルをやっと見つけ、ひと晩を過ごしてから早朝にバスターミナルへ。

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 東海岸沿いを北上して、古代ギリシアからの古い都市シラクーサ、ヨーロッパ最大の活火山・エトナ山を望むカターニアを経て、到着したのがリゾート地であるタオルミーナ。ここには88年の伊仏映画、リュック・ベッソン監督の「グラン・ブルー」のロケで使われた小さな島、イソラ・ベッラがある。映画はダイバーとイルカの話で、このタオルミーナでダイビングのコンテストが開催されるというものだった。島はとても美しく潮が引くと歩いて渡れる観光地だが、旧市街の好きな僕は街の中をグルグルと歩く方がメインだった。

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 タオルミーナは占領と反乱の古い歴史があり、中世にイスラムと戦った場所でもあるが、いまやおしゃれなレストランやブティックが並ぶ人気の保養地。路地巡りが好きならおススメの場所。何気ない風景がどれも可愛いのだ。

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  車が停まっているだけでも可愛い。

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  お菓子屋さんも可愛い。

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  玄関の壁に手書きで書かれた猫の絵も可愛い。

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  オレンジ売ってるだけで可愛い。

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  猫発見、やっぱり可愛い。

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  上を見上げると…頂上にある村、カステルモーラも観光スポットだ。

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  見下ろすと、マッツァーロ海岸、ロープウェイで降りられ、イソラ・ベッラに行ける。

 街には古代劇場やレモンの花が咲く公園、聖堂などの見どころもあるが、街歩きだけでも十分満喫できる。こんな街に住めたら、いまの仕事は辞めるだろうな、なんて思ってしまう。ここで見た素敵なことを全部伝えようと思ったら写真はこの10倍以上は見せなきゃいけない。実際、僕がタオルミーナで撮った写真は800枚以上だ。たとえばランチに食べたピスタチオソースのパスタとか、名物のチーズのジェラートをブリオッシュパンに挟むスイーツとか、夜にギター弾きがいるオープンテラスのレストランとか、料理についても特筆できることがいろいろあったけれど、書き出したらきりがない。



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  迷路のような路地を歩いていたら、日が暮れて、肩幅しかない路地に出た。

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  街中には猫がたくさんいる。翌朝、見かけた猫に付いていくと…

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  軽快に駆け下りていった。思ったより長い追跡になり…

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  集会に出た!

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  今回の猫論的ベストショット!

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  餌をあげている女性は珍しくなかった。文句を言う人はいない。

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 ふと見つけた総菜屋さんに入った。レストランではなく、こういうところで買って、そこらで腰を下ろして食べるのもいいもの。父子でやっている店でシーフードのマリネを頼んだら、息子が父親に「もっとサービスしろよ」と言い、おまけでライスコロッケをくれた。お釣りが多かったので返したら「普通は返さないよ」と笑われた。

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 イタリア本場の料理はパスタはじめ、「日本で食べているイタリアンは一体、何だったんだ」と思うほどレベルが高い。水や野菜の品種が違うのと、使っている出汁ベースが違うからだと思う。日本のトマトは生食に適しているが、イタリアントマトは過熱した方がおいしい。イタリア人が必ず使うような魚醤もあって、これが日本のイタリアンレストランではほとんど使われていない。バールでのエスプレッソも高品質、コーヒー嫌いでもこれは美味しいと思うのでは。この国の食文化レベルが高いのは、街中の食堂の大半がイタリアンレストランであることでも伺える。とはいえ、もとは小国の集合体だから地域によって差異はあり、ソースひとつとっても多様性が見られる。イタリアをよく南北に分け、「北は~、南は~」と言う人がいるが、そんな単純なものじゃないというのが僕の見方。南部は貧しくても陽気みたいな印象を持たれることがあるが、優秀なシチリア人作家は多く、地域密着の出版社や書店が盛んなのはナポリやシチリアで、中産階級のエネルギーを感じるところも多い。



 シチリアといえば、マフィアの起源でも知られる。街中には映画ゴッドファーザーのグッズも売られていたりするが、もとはアラブ人らに侵略されたことに対抗する自治組織であり、それが19世紀にアメリカに移住した者による犯罪組織に発展、再びシチリアに里帰りした歴史がある。組織の権力が中央に集中せず、ファミリーごとに地区支配していたのが特色で、内部抗争も多かった。政治家や支配階級を巻き込み、公共事業も支配。このあたりは日本の暴力団の歴史にも通じるものがある。僕の取材でも、旅行者の目には見えない暴力が存在したことはハッキリ分かった。陽気で楽しい国の裏側がそこにある。

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 さて、タオルミーナを出てどこへ行くかというと、本土へのフェリーも出ている北のメッシーナという街で、さらにそこから別の港町へ行き、火山帯のエオリエ諸島へ行く船に乗った。溶岩を噴き上げる夜の火山を目指したのである。ちなみにフェリーではエコ税というのが1.5ユーロ徴収された。船の外側は風が気持ちよさそうで、僕の席の窓の前も、いちゃいちゃカップルのキスシーンが展開されていたのだが、船が速度を速めると波をザバザバとかぶってカップルびしょ濡れに。正直、乗り心地は悪く、乗客は次第に船酔いで言葉少なになっていた。

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 めざせストロンボリ島!

 周辺に島はたくさんあるが、1日ですべて巡ることは難しい。島によっては温泉もあったりするから、もっと時間に余裕があれば全部まわりたいと思うぐらい。今回は2島を行くコースを選択。船内ではパスタと紙パックのワインが配られたが、これまで何度も旅してきたイタリアで唯一、「まずい」と思ったのがこの食事だった。乗客のほとんどがドイツ人観光客だったが、彼らも「これは食えない!」と文句を言っていたほど。

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 途中の島は白壁の集落があって、これはギリシャと同じ。

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 ここでも散策は楽しい。

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 小さな離島でも猫。なぜか自分から人の前に現れ、話しかけるような視線で座っていた。

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 ストロンボリ島は溶岩のかけらだらけ。黒い溶岩でできた黒いビーチが広がる。ただ、多くの乗客がすっかり船酔いによる疲弊でぐったりしていて、同じテーブル席に座って道中、ずっとおしゃべりしてもらったドイツ人の老夫婦もバテていた。もちろん僕も必死に耐えていた方だから写真を撮るのがやっと。ただ、日が暮れるまで島内でのんびり過ごすから、時間を置いて回復できた。ちなみに土産店では真っ赤な液体の火山イメージの酒が売られていて、アルコール度数を見たら70%だった。

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  おお!と思うだろうが、これは道中もらった資料のもの。

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  実際にはこうだった…。

 今回はハズレ。噴火ナシ。ドイツ人たちもこれにはかなり文句を言っていた。天候のことだから仕方ない。残念だったが、正直に言うと僕にはどっちでもよかった。当時、僕は裁判を抱えていてイヤな気持ちにさせられることが多く、だからこそ旅を楽しむ必要があった。何があっても、この旅は楽しいものなのだと決めていたのだ。イヤなことがあったとき、落ち込むだけでは何も生まれない。他人とモメゴトが起きるのは生きていれば避けられないが、そういうときは開き直って楽しいことをすればいいと思う。だから予算オーバーでもかまわず各所を巡った。日々の生活から抜け出て非現実的な環境で、好奇心で頭をいっぱいにし、きれいな景色を見て、おいしいものを食べて、楽しい人たちと話す。そうすると、活力が湧いてまた一歩を踏み出せた。揉めた相手を延々と恨み続けるような人は、その人の人生がつまらないからだと思うのだ。僕は違う選択をしたい。だって、僕なんかよりずっとイヤな出来事に遭遇している人たちはたくさんいるはずだし、僕の人生は成功とは無縁でも退屈はしていないのだから。バスに乗ればまた次の街へ行ける。必要なのはその切符代だけだ。ワインとレモンの香り、ローマ時代やバロック時代の文化に囲まれたシチリアでは、ほんの一部を歩いただけでも充実できた。次の目的地はまた後日。(片岡亮)

  • コメント 7

コメント

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No title

人生を満喫したもん勝ちですな。

  • [486994]  2017.03.22
  •  名乗れない人 #-

Last gang in town

わお~、続編、有難うございます。

しかし面白いものですね、
同じ人間なのに、こうも町並みや景色が変わってくるとは。

アーチ状の門や扉、入組んだ狭い路地、
それに、猫が下りていく石畳の階段なんて、本当にワクワクする
ような風景です。

このように古くて歴史のありそうな建物や街を、
今も変わらず使い続けている人々にセンスの良さを感じます。
便利であるとか、機能的であるとか、最新だとか、
きっと、そうしたものとは違う価値観を持っておられるのでしょうね。

たとえ大金持ちでなくても、
それこそ 「可愛い」 とか、「美味しい」等に喜びを感じ、
この風景の一部となってゆったりとした人生を送る。
時代に流されない、真の贅沢を知っている人々なのでしょうかね~。
カッコいい生き方です。

私もそんな風に生きていけたらなあ、と思いますが、
現実は、日々の生活に追われて、なんだか、チマチマとした
人生を送っちゃってるなあ、、、

煩悩が多すぎるのかなあ、、、トホホ。


でも、なんだか、またちょっと息抜きが出来ました。

有難うございました。

  • [487001]  2017.03.22
  •  CHAOS E.K. #JCeKwuWs

片岡さん、羨ましい限りですよ。ボクはスペイン語をずっとやって来て、日本、中国、欧州からの移民の歴史に興味があるので、アルゼンチンのイタリア移民の習慣、風習、文化が本国でどのように受け継がれているのか?に関心があります。サッカーのオーストラリア代表って本来ならばもっと実力があるらしく、特に移民2世のセルビア、クロアチア系が二重国籍で欧州代表を選ぶと聞きます。イングランドプレミアの下部に在籍し、U-20日本代表に招集される母が日本人のハーフの有望選手がいますがそんな感じ。

  • [487032]  2017.03.22
  •  ピコ次郎 #-

No title

 ありがとうございます。人々の移動って面白いんですよね。身近なところでは「郊外の成り立ち」とかも調べてみると興味深いです。

 言語が文化とともに移動しているのも、その視点で見ると各地の融合から新たなものが生まれていて、いまある文化のルーツも見られますね。

 スペイン語をやられているなら、イタリア語(トスカーナ)がその進化形だということはお分かりかと思いますが、イタリア人に身振り手振りが多いのは、地方言語がそれぞれ分かれまくってたこともあると思います。ファシズムの外国語の言葉狩りを経た影響があったり、言葉と文化は一体ですね。気軽に英語を使うと間違った意味に受け取られることもありました。レストランでSofiscatedと料理を誉めたら、質の苦情にあたるSofisticatoと勘違いされてしまいました(笑

  • [487113]  2017.03.23
  •  ★ 片岡亮 (NEWSIDER) #-

イタリア語は所謂、ラテン語rootsのロマンセ語系ですが、スペイン語から枝分かれしたのがポルトガル語だと認識しています。おそらくイタリア語はきちんと勉強しないとスペイン語と混同してどちらもダメになってしまうかも?
Facebookのコミュニティー、《日本語とスペイン語》には15,000人を数える人がいて、一部から先生扱いされて恐縮しています。
スペイン語は多くの国で公用語となっているので地域主義、レヒオニスモ(regionismo)をラテンアメリカン諸国の人たちは誇りにしており、いわゆるacademia espanyolとは違っている面もありますね。個人的には日本人学習者にとって、一番聞き取りやすいスペイン語はコロンビア、Bogota周辺のスペイン語だと思います。
いつか南のイタリアを歩いてみたいです!

  • [487153]  2017.03.23
  •  名乗れない人 #-

ストロンボリ島の写真、活火山のように見えたけど雲なんですよね?

  • [487249]  2017.03.23
  •  名乗れない人 #-

No title

煙はモクモク出てましたよ。

  • [487258]  2017.03.23
  •  ★ 片岡亮 (NEWSIDER) #-

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