【旅論】マルタのアズール・ウィンドウが崩落…

 マルタの名所「アズール・ウィンドウ」が暴風と高波などで3月8日までに崩落したという。現地では単純に「ブルー・ウィンドウ」とも呼ばれていたが、日本語だと「紺碧(こんぺき)の窓」と訳すそうだ。というわけで、メキシコに行ってきたばかりなのにマルタの話を。

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 2年前に中東移民問題の取材でマルタ島へ行ったとき、フェリーに乗って隣のゴゾ島に渡り、アーチ状になった岩の前で水しぶきを浴びた。いわゆる奇岩の風景のひとつ。写真で見ると迫力はちゃんと伝わらないから、あまり期待して行ったわけではなかったが、実際に見たそれは「来てよかった」と言える景勝地で、思わず横の小さな売店で景色写真のマウスパッドを買ってしまったほど。

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 マルタは騎士団の歴史で知られる小国。人口40万人程度で、裕福な移住者も多い。空港は小さいからイミグレーションも小規模だが、僕はここで1時間近くも待たされた。「こちらの情報とあなたのパスポート番号が違う」と言われた。こういうとき普通は別室に連れていかれるものだが、到着客の姿がまったくないゲート前で立ちっぱなしだった。そこですっかり忘れていた3年前のフランス・マルセイユで車を運転中に強盗に遭ったことを思い出した。緊急保護してくれた大使館でパスポートを作り直している。慌ててそれを伝えたら、新たにデータ更新を行なって、やっと通過させてくれた。ちなみにマルタの職員、その話を聞いて怖そうな顔をして「フランスは治安悪いから行きたくないよね」と言っていた。厳格で無表情な税関職員が急に顔色を変えて親身に言ったから、一瞬、笑いそうになってしまったが。

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 紀元前からの巨石神殿文化があり、エジプトのピラミッドより古い謎が存在するマルタだが、首都ヴァレッタはそれを尊重するように町並みも建物を「ハチミツ色」で統一、まるで遺跡の中で生活しているような雰囲気。ただ、僕が行ったときは、やたらと店が閉まっていて、空いているレストランに人が行列となっていた。人に聞いたら「復活祭(イースター)の前の金曜日だから準備で休み」と言っていた。だから、静かな時期しか見ていないということになるが、海沿いに市内バスで新市街の方に出たら普通に賑わっていた。

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 人々はわりとシャイな印象だが、一度話せばフレンドリー。英語が通じるということで深く考えないで行ってしまったが、マルタ語は耳に入る語感がアラビア語っぽく聞こえ、聞いたら文法もそっくりでアラビア語由来の言語だとか。街を歩いていると、猫がたくさんいて、世界遺産のきれいな街並みなのに、2階から野良猫をめがけてハムを投げやるのを何度か見た。猫が風景に似合うし、人が猫に優しいから逃げない。こういうおおらかな場所は旅行がしやすい。ただ、旧市街の中で、中国人観光客が有料の公衆トイレ代(20~30円程度)をケチって、そのすぐ横で立ち小便をしていたのは呆れた。目の前でその光景を見た欧米人も幽霊でも見たような顔で、かなり驚いていた。そりゃそうだ。

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 食事は地中海料理で、イタリアンがメジャーな感じだが、本場イタリアと比べたらかなり味は落ちた(コクがないというか)。ただ、名産の蜂蜜やドライトマト、イチジクの酒などはとても美味しい。ハチミツで作ったハンドクリームもかなり質が良い。ブッシュ×ゴルバチョフ会談のあった漁村マルサシュロック(ちょっと発音しにくい)までバスで出てみると、海の見える港町に住むならこんな場所がいいと思う素敵なところだった。カフェで朝のコーヒーをすする人たちがいて、市場があり、海には目が描かれた青と黄の独特のデザインの船が並ぶ。海を眺めていたら、おばあさんに話しかけられた。いかにも渡航者といった東洋人に話しかけるなんて、きっと寂しがり屋なんだろうなと思ったら、「7年前に夫が死んで寂しい」と言った。どんなに素敵な場所でも、寄り添う人がいないと人間は寂しく感じるものなんだなあと思った。

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 海の見える通りで居眠りしている老人。この上なく幸せな光景だと思う。

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 ウィンドウのあるゴゾ島はフェリーで1時間ほど。チケットを売ってくれた中年男性は「太平洋を何か月も横断する人に比べれば一瞬の距離さ」なんて言っていた。この人、ブルガリア出身で、僕が日本人だと分かると「琴欧洲はヒーローだ」と言った。海はきれいで、船は味のあるクラシカルなデザイン。島の中心部も街並みは狭い路地が入り組んだ旧市街そのもので楽しい。バスで15分ほどで行けるのがアズール・ウインドウで、数千年かけて生まれた高さ20メートル、幅100メートルのアーチを見た。海岸だから風は強く、よろめきそうになったが。

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 僕は仏教寄りなスタンスだけど、可愛さでキリスト教にはかなわないと思った。

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 新市街に戻って疲れた体にエナジードリンク!効きそうなデザインだけど、商標が正規のモノか怪しかった。

 マルタからは大きなフェリーでシチリアに渡った。船内は快適だったが、現地到着が夜で、売春婦がポツポツ立ち並ぶバスターミナル周辺を歩かなくてはならず、マルタの爽快な空気がウソのようにダークな風景の中にいた。あまりに暗いから、唯一、開いていたハンバーガーショップに逃げるようにして入った。ファストフードは好きではないので、なんでもいいやと、メニューにあった「イタリアンバーガー」を頼んだら、「ソーダとフライドポテトを付けるセットにするか」と聞かれ、付けてもらった。しかし、出てきたものは、パンにフライドポテトを挟んだもので、そこにフライドポテトが余分に付いてくるという、誰が考えたんだよコレ!というもの。そもそもどこがイタリアンなんだ。トマトとチーズとオリーブオイルとかじゃないのか。写真を撮っておけばよかった。でも、その後のシチリア旅は大いに堪能。その話はまた後日。

 ちなみにマルタのボクシングは無名選手が出る程度の興行ならある感じ。メキシコ旅はルチャリブレのOKUMURA選手の取材を木曜日の夕刊フジにて。(片岡亮)

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 バス到着した目の前がこれ…シチリアだけに、ゴッドファーザーとかマフィアとか頭にチラついちゃうっつうの。

  • コメント 15
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コメント

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No title

保存の募金活動やってたのにね。

  • [485826]  2017.03.14
  •  名乗れない人 #-

こう言う旅の話…。凄くいいですね。私も若い頃、少しだけアメリカを片言英語で回った事がありますが、なかなか自分の思った通りにいかないですが、自分の思った通りにいかないのも旅の魅力の一つなんですよね。

  • [485831]  2017.03.14
  •  名乗れない人 #-

No title

 あまり気張らずに書いていたいので、大した内容じゃなくて申し訳ないですが、「自分の思った通りにいかないのも旅の魅力」は同感です!

  • [485840]  2017.03.14
  •  ★ 片岡亮 (NEWSIDER) #-

グ◯ビア?

片岡さん   ついに腐女子にまで 範疇を拡げるか?の図 笑

  • [485852]  2017.03.14
  •  kaiban4 #-

懐かしいです。

10年以上前ですね、往復シチリアからフェリーで行きました。ヴァレッタの城壁みたいなのと、船の目が印象に残っています。それとホームレスを全く見なかったですね平和を感じました。あとお金の単位を「リラ」と言う人が何人か居ました。イタリアもユーロに代わっているのに、今の欧州はどこも真贋難民問題で無傷な国は無さそう、経済レベルの高い国&温暖な国は難民問題が大変でしょうね、懐かしかったです!ありがとうございました。

  • [485860]  2017.03.14
  •  白ひげ危機脱出 #-

Wrong 'Em Boyo

いや~、まさに地中海、「異国の地」 ですね~。

町並み、石畳、港、海、、、


片岡さんの旅論は、観光スポットの紹介ではなく、
その土地やそこに暮らす人々の「普段の姿」を垣間見せて
くださるので、ワクワクします。

ブラタモリ、ならぬ、ブラカタオカ ですね、まるで。

マルタの土の色と空と海の澄み切った青のコントラストで、
なんだか爽快な気分になりました。

そして、猫の背中は万国共通で愛くるしいですね。


大した内容じゃない、なんて、とんでもないです。
様々な場所で片岡さんが見、聞き、体験・実感されたこと、
これは、私のようにあちこち行くことの出来ないものにとっては
ほんとうに貴重で興味深いお話です。

またいつか、
片岡さんの膨大な旅日記の中からとっておきの1ページを
ご紹介いただけましたら嬉しいです。


P.S.
 いつも記事をUPしていただき、有難うございます。


  • [485887]  2017.03.15
  •  CHAOS E.K. #JCeKwuWs

No title

 ありがとうございます。じっくり書けば、もっともっといろんな話があるんですが、なかなか時間が取れず、仕事とか別で使いたいネタが多々ということもあって、旅人ブログよりも薄いんじゃないかと思いますけど、興味ある方がいらっしゃって嬉しいです。

 ダークなところではテロリスト潜伏の可能性に怯えている側面があります。チュニジアのテロがあった後は人々が中東系移民に差別感覚を強めていて、これはシチリアも同じでした。その割にマルタは正直、イミグレーションは緩いと思いました。周辺の政治的介入が少ないからターゲットになりにくいでしょうけど、テロリストが事を起こそうと思えばベルギーより楽だと思いますね。

 海外の街は基本、旧市街が面白いと思っています。海外にあまり行ったことがないとニューヨーク、ロンドンでも楽しいと思いますけど、いろいろ行ってると東京と大差を感じなくなるので異国感に飢えますね。それとは関係なく南ヨーロッパはとにかく素敵、という基本感覚もあります。物価が高めなのが痛いですが(笑

 マルタの騎士団は改めて身近に感じるとこれも興味深いです。十字軍や人々の救援に始まり、厳しい戒律でキリスト教を守った聖戦士。マルタを譲り受け、ときに敵の大包囲網に耐え抜き、ルネサンス末期の街を造り、平和を構築。いわば都市国家ですが、戦いがない世界で堕落が始まり、ナポレオンに無抵抗で降伏するまでになってしまい、「こいつら道徳心もゼロじゃないか」と言われてしまったとの話。その後はフランス領を経て英国に統治。マルタ共和国ができたのは1974年ですから、人々が歴史を振り返った時、遠い時代の騎士団を誇りに思うのは当然かもしれません。その名残りの城塞都市だから大事にする気持ちもあるのかな、と。

  • [485888]  2017.03.15
  •  ★ 片岡亮 (NEWSIDER) #-

No title

マルタのボクシングについて、凄い興味があります。

俺は海外に出たことがないので、有料の公衆トイレにカルチャーショックですね。

勉強なります。
ありがとうございました‼

  • [485918]  2017.03.15
  •  けんたぼん #-

旅論すごく面白いです。まったく中国人どうしよもないですね 。おばあさんの話とかちょっと危険なバス停とか旅には色々あって読んでて楽しいです。イタリアンバーガー写真でみたかったですw

  • [485924]  2017.03.15
  •  名乗れない人 #-

イタリア語と英語のチャンポンですね。

  • [485940]  2017.03.16
  •  漠ー #-

No title

旧市街や路地の写真いいですね。マルタの魅力がよく伝わってきます。海や海沿いも綺麗ですし、裕福な移住者が多いというのもわかります。

マルタの新市街のほうの写真は、雑多でよく有る都市って感じですかね。人口40万人の国にしては車が多いようにも思えますねw
いくなら港町のほうかなぁw

  • [486062]  2017.03.17
  •  名乗れない人 #-

No title

マルタといえばマルタの鷹しか思い出せないという引き出しのなさ。
相変わらずいい記事ですね。

  • [486063]  2017.03.17
  •  名乗れない人 #-

No title

 イタリアンバーガー、写真を取り損ねちゃったんですよ。

 新市街は普通のヨーロッパで、ショッピングモールで近代的な買い物ができます。

 旧市街はレストランに入らないとトイレがないですが、有料の公衆トイレだと中がきれいなので安心しては入れますね。

  • [486185]  2017.03.18
  •  ★ 片岡亮 (NEWSIDER) #-

日本語を勉強中のイタリアンムスメに云わせるとイタリア領内ではあるけれど、そこはシチリア語であって、イタリア語ではないらしい。

  • [486588]  2017.03.19
  •  名乗れない人 #-

No title

 イタリアはもともとバラバラだったわけなので、シチリアだけじゃなく多くの地方言語がありますね。

  • [486969]  2017.03.22
  •  ★ 片岡亮 (NEWSIDER) #-

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